2020.07.28
朝露の譜
美しい風景を見た。
事務所にむかう途中、
車を停めてうっとりしながらも、
思わずシャッターをきる。
また逆光の写真である。
カメラは父から教わった。
思えばそのころから逆光がすきだった。
順光にはない、鋭利と柔らかな光が創る濃淡の影が、
この世ではない世界の、一瞬を映すような気がする。
南禅寺ではじめて大好きな人を撮った時も逆光だった。
ファインダー越しに彼女の髪の先端に宿る光、
粒になり曲線になり反射して揺れていた。
それから数年後、僕は建築家になった。
建築の仕事でもカメラは必須アイテムだ。
光はというと建築家にとって大袈裟だが、
命かもしれない。
夏には暑い西日だって光にすれば味方になる。
まさに光と共存して設計をしているのだ。
いま稲田いち面に光り輝く朝露を見ながら
コロナのことを考えている。
ニュースではwithコロナだって？
冗談じゃない。
だけど、コロナから家族を守り、
安全にコロナと共存できる家は必要だ。
西日や逆光を味方にするように、
コロナにだって方法はあるはず。
こんな最中でも稲は穂をつけ、やがて実る。
時は流れているのだ。
僕は迷っている。
建築家として、今日も考えている。
esora-house
